"健康"と"味"へのこだわりで利益UP!
マルコ醸造株式会社(恵那市)
[全文公開]番組シナリオ
1.背 景
ここは恵那市明智町の日本大正村にある大正村浪漫亭。わずか15年ではあったが激動の大正時代を見て、味わい、楽しめる場所として、昨年10月にリニューアルされた商業施設だ。恵那市長が社長を務める大正ロマン株式会社が所有し、地域活性化に資するレストラン、カフェ及び売店を運営している。
マイカーや観光バスで訪れる客のほか、JR恵那駅から出ている明知鉄道を利用して、ゆったりのんびり訪れる客もいる。時間を忘れて緩やかなひと時を過ごせる観光スポットとして老若男女問わず根強い人気がある。大きなガラス張りの建物には、明るい日差しが差し込み、居心地の良い空間となっている。
店内1階にはカフェや土産物店、2階にはレストランがあり、その一角に一風変わった塩麹や醤油麹入りのソフトクリームや麹スムージーを提供して人気を博している小さな店舗がある。棚には醤油や味噌などの調味料がならび、ご当地食品の五平餅に付けるくるみ味噌タレが店一番の売れ筋商品なのだとか。
2.由 来
この店舗を運営するのは、近くに本社があり来年創業120周年を迎えるという、老舗の味噌蔵であるマルコ醸造株式会社だ。明治31年創業、小木曽智彦現社長で4代目となる。天然醸造、手作りにこだわった、味噌、醤油、漬物、麹などを製造しており、米・麦・大豆の三種の麹を使った味噌は人気だ。
先代の社長(父)は、内モンゴルの大地で大豆の生産から無農薬味噌の生産まで取り組んだ。その会社は拡大し、現地の需要の高まりとともに現在では上場企業にまで育っている。先祖から伝わる、昔ながらの伝統の手づくりの製法を受け継ぎ、海外生産という革新的な取り組みも背景に、成長を続けてきた。
平成13年(当時31歳)に3代目(父親)が突然なくなり、準備もないまま急遽社長に就任。日々忙しく自ら都会へ出張販売しに行くなど激務が災いし、平成22年には体調を崩す。治すために食事療法をしたことから健康を意識することとなり、食の大切さを再認識し、食のあり方について研究を進めた。
3.本 題
そこで改めて、和の食卓で古くから伝わる味噌や醤油に用いられる麹のある発酵食品、醸造文化の重要性を見直した。アイスクリームやスムージーなど、現代人のライフスタイルにマッチするような新商品を開発するとともに、食品の作られ方や選び方、何でできているのか等、食育事業を年十数回行うことに。
味噌作りなどの食育講座に参加したお客からは、「目からうろこ」「ためになった」「まさかそんなこととは」などと大変好評を博しており、自社で企画して開催するほかにも、今では他社主催のセミナーに講師として呼ばれるほどに。マルコ醸造を知ってもらうきっかけになるとともに、事業の柱に育ってきた。
また、マルコ醸造では自社での新商品開発とともに、OEMによる他社製品の商品開発にも力を入れている。発酵食品、醸造文化を広く多くの人々に届けたいとの思いから、大企業では大量生産でしかできないオリジナル商品の生産を一樽単位の小ロットて引き受けて、全国各地との取引実績にも繋がっている。
4.解 説
味噌や漬物をつくる中小規模の食料品メーカーは、大量生産する大企業と戦っても、効率面では勝つことができません。自社の強みを引き出して、特徴を出すことで、選ばれる商品として独自の地位を確保していかなくてはならないのです。
ご覧戴いた小木曽社長は、自社商品がカラダに良いことに着目し、伝統的な製法による味にこだわり、守り続けています。そして食育講座を通して伝え続けることで、根強いファンを獲得しています。健康と味に徹底したこだわりを持ち、伝統を守りながらも新しい挑戦にも取り組み、自ら情報発信し続けたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。
完