"人との縁"で"地元の魅力"で復活!
有限会社アールアンドエスフーズ(関市)
[全文公開]番組シナリオ
1.背 景
ここは関市にある道の駅平成。下呂温泉への近道ということもあって、県下で一番の集客を誇っている。週末ともなると駐車場はマイカーやライダーで溢れて一杯だ。外には露店も数多く出店するなか、ひときわ目立つ絶好の場所で威勢良く行き交うお客さんに声を掛け、好調な売り上げを達成している店がある。
そこで取り扱っているのは、美濃地域や名古屋で人気のある豚のホルモンを味噌漬けした「とんちゃん」や、特許製法で作られているという「キムチ」だ。いずれも試食が可能ということで、店内に出入りするお客さんたちはほぼ全員足を止めて試食し、なかにはまとめ買いする人やリピーター客もかなりの数いる。
これらの商品を仕入れて販売しているのは、食品卸売業を主たる事業とする池村真一郎さんだ。道行く人々に大きな声で愛想よく声掛けするので誰もが振り向き、ついつい足を止めては試食に興じている。もうかれこれ一年ほど軒先で試食販売しているので、すっかり道の駅平成の顔にもなりつつある存在だ。
2.由 来
池村さんが社長を務める会社は有限会社アールアンドエスフーズといい、平成14年4月に彼自身が創業した会社だ。それまでの会社勤務時の経験をもとに順調に業績を伸ばしていた当社は、業務用の問屋や商社、メーカーに食材を販売していたが、中国産冷凍餃子事件をきっかけに苦境に立たされることとなった。
輸入食材が忌避され国内食材の価格が高騰、飲食店の経営が困難を極めるに至り、取引先がいくつも倒産するなどしたことから大きい額の売掛金が回収不能となり、資金繰りに窮する事態となった。また、取引先が遠方に多いことから商談のための移動経費が嵩み、コスト倒れの商品が多くなる状況に追い込まれた。
そこでこうした苦境を乗り越えるため思案を重ねた池村社長は、これまでのように規模を追うのではなく、地道に地元関市近辺で顧客開拓することと、なるべく近くにある食材の魅力を改めて見直し、小さくとも着実な商売をコツコツしていくことに業態をシフトすることを決断し、周囲の人々にアドバイスを求めた。
3.本 題
それまで取り扱っていた「とんちゃん」がメーカー都合で出荷ストップし苦慮していたところ、美濃市で食品梱包材を取り扱うツチモトの土本社長の紹介で、「とんちゃん」を供給してくれるという郡上市の食肉加工業者である寅嬉屋の臼田社長の紹介を受けた。郡上商工会の会頭も務めた信用の置ける心強い人物だ。
美濃市での重要な役職も果たしている土本社長には、中部地域の魅力ある優れた食材の数々を紹介してもらっているほか、自社のオリジナル商品とするためのパッケージの相談にも乗ってもらっているなど、苦境から立ち直るきっかけを作ってもらったキーパーソンと云える、当社にとって最も重要な存在となっている。
また、地元の魅力をもっともっと発信していきたいと考える池村社長は、岐阜を代表するスイーツを生み出したいとの想いから、かつて「なめらかプリン」を世に送り出し大ヒット商品に育て、現在は岐阜市でお店を構えるバティシエの所浩史氏に依頼して新商品開発を進めており、次なる柱となることが期待されている。
4.解 説
中小規模の食品卸売業は、大資本による安売り店の全国規模での展開や、インターネット販売が普及してきたことで、苦境に立たされています。また、輸入食材が品質問題を発生させるなど、外的要因の影響を大いに受け、大量販売して利益を確保する事業モデルは限界を迎えています。
ご覧戴いた池村社長は、逆境の中で信頼できる名士達との出会いから、オリジナル商品の開発と販売に舵を切り、ヒット商品に育て上げました。環境が変化する中で、人と人とのつながりから自社商品を開発し、自ら小売業に乗り出したことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。
完