地元への想いとこだわりが大ヒット商品を生む!
株式会社金森生糸店(岐阜市)
[全文公開]番組シナリオ
1.背 景
ここは観光客で賑わう、ぎふ金華山ロープウェイ乗り場。お土産物売り場で人気のご当地商品に「長良川サイダー」がある。水道水としても使われており、美味しいと評判の長良川の伏流水を原料に用い、微炭酸で飲みやすく、あっさりとした味わいは誰からも愛される味として、四季を通して新しい岐阜土産として定着している。
名水百選に選ばれ、「清流を保ちアユ漁を続ける長良川上中流域地域」が「世界農業遺産」に認定されるなど、世界から注目を浴びている清流長良川。毎年、夏の風物詩として5/11~10/15まで毎日開催される長良川鵜飼には1300年以上の歴史があり、時の権力者に保護され、広く世界中の人々から愛され続けている。
また、中流域の岐阜市付近では地下に伏流水が流れ、良質の地下水が汲み上げられて上水道として供給されており、一部の家庭では地下水として直接取水され、生活と密着した関係にある。そうした中、長良川サイダーは市内にある金森生糸店が「伊奈波商会」という社内ブランドを立ち上げて、2012年に発売したヒット商品だ。
2.由 来
江戸時代より12代に亘り岐阜町で商いを営み続ける金森生糸店のルーツは、岐阜城城下町の刀鍛冶。江戸後期から明治時代までは茶道具、昭和23年の祖父の時代に社名の由来となっている生糸店に。現在は食品などの梱包資材の卸売が主たる事業となっており、時代の流れによって新たな商売を手掛けるユニークな家柄だ。
長良川サイダーを開発した金森正親さんは、日頃取り扱う梱包資材は捨てられてしまうものであり、手元に残るものが作りたいと考えていた。また、自社の資材が観光菓子の梱包に使われていることから、観光客に魅力的な商品を模索していた。思いは募り、ついに観光客が買いたくなる"何か"を自ら生み出そうと決意する。
生まれ育った岐阜町は、水源として、漁場として、そして流通の経路として、古来より清流長良川の恵みに支えられてきた。この川から恵みを享受するだけでなく、恩返しができたらと考えた金森さんが考えたお土産物は、市内の水道水の原水や地下水として使われている長良川の伏流水を原料の主役にした、サイダーだった。
3.本 題
原料には、岐阜市の水道水を供給する鏡岩水源地から直接分けてもらう原水を使用。長良川の美味しい水の魅力がストレートに伝わるようにと、グラニュー糖だけで甘みをつけた、どこか懐かしい味と香りが自慢。製造は桑名市の鈴木鉱泉に依頼し、タンクの洗浄も長良川の水だけを使用して瓶詰めしてもらうというこだわり様だ。
毎年、郡上市明宝地区で地域の環境保全団体と植樹を行い、長良川サイダーの売上の一部を源流の森を守る活動に寄付しており、「この想いを、若い世代や自分の子どもがついでくれたらうれしい」と云う。また、新しいロットが納品される際には、伊奈波神社と境内にあり水を司る黒龍社を参拝して、感謝の気持ちを表している。
故郷である岐阜を愛し、川への感謝の気持ちを大切にする金森さんの想いがカタチとなって長良川サイダーは2012年4月に誕生して以来、大人も子供も、老若男女の誰もが親しみやすい味多くの人々に支持されるヒット商品へと一気に成長した。金森さんは現在、岐阜を代表する新たな土産物となる商品を開発すべく奮闘中だ。
4.解 説
岐阜市近郊はかつて、上流域で伐採された木材や美濃和紙の流通拠点として、その後は繊維の街として栄え、その時々に長良川が大きな役割を果たして栄えてきました。また、長良川は飲料水に用いられるだけでなく、名水百選に選ばれ世界農業遺産に認定されるなど、流域の美しい景観とともに豊かな天然資源として注目を浴びています。
ご覧戴いた金森さんは、ふるさとを深く愛し、川への感謝の気持ちを大切にする中で、お土産物の開発を思い立ち、多くの人々に支持されるヒット商品に育て上げました。柔軟な発想で環境の変化に適応し、地域資源の魅力を十分に引き出して、身近で親しみやすいオリジナル商品を開発したことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。
完