書籍「岐阜発 イノベーション前夜」執筆を通して考えたこと
(日本生産性本部茗谷倶楽部会報第78号寄稿文)
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三輪知生(経営塾2期)
情報発信の重要性について考える
私が経営コンサルタント塾(2期)を修了したのは、2005年3月のことです。その後、経営コンサルタントとして積み重ねてきたキャリアにつきましては、茗谷倶楽部会報第76号「私のキャリアと事業のコンサルティングレビュー」をご参照ください。そしてこの度、本年2月28日に生産性出版より「岐阜発 イノベーション前夜-小さな会社を『収益体質に変える』事業のつくり方」(364頁/税込2530円)を出版させて戴きましたので、今回は著書の紹介を兼ねまして、企画段階における考察と内容構成について記述したいと思います。
そもそも私は、企業支援を事業としてスタートするにあたって、「たとえ優れた商品やサービスであったとしても、知名度や認知度が高くなければ潜在顧客に知れ渡ることなく、市場に浸透しない」という事実に強い興味関心がありました。そこで、情報発信やプレゼンテーションに関する啓蒙啓発をサービスメニューの根幹に据えることとしました。幸いなことに私は、大学時代にアメリカ(イリノイ州立大学)に交換留学し、日本人が学ぶ「起承転結」ではない文章構成や口述表現のスキルについて、学術的にアプローチする機会に恵まれていました。
日本人は常識的に「文章は起承転結で書きなさい」と先生から教えられ、書く本人も疑うことなく、そのように書いていると思い込んでいます。しかしながら、「起承転結」が内包する意味やその語源について、どれくらいの人が正確に認識しているでしょうか。実際のところ、周囲の先生に聞いてみても、的確に答えられる人は少ないのが現状です。「起承転結」とは、漢詩の4行で構成される絶句のパラグラフ(段落)であり、文学的に体裁が整っている、情緒的に風情がある、といった条件を満たしているに過ぎず、必ずしも論理的とは言えません。
「浮世舞台の花道は 表もあれば裏もある 花と咲く身に歌あれば 咲かぬ花にも唄ひとつ」-これはテレビ東京「演歌の花道」のナレーションの決め台詞ですが、まさに「起承転結」で構成されており、確かに私たちの心に響きます。このように、事象を情緒的に表現する際に用いられるのが「起承転結」でありますが、じつは「転」の箇所において文章の論理構成が分断されています。文学表現としては「いとをかし(趣がある)」ではあったとしても、聞き手を論理的に納得させたり説得するためには、十分な情報が含まれていないと言えるのです。