中小企業の未来のために
2014年4月から2018年3月まで、中小企業庁による中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業である、よろず支援拠点事業において岐阜県の代表職であるチーフコーディネーターに従事。紹介動画の制作にあたり企画監修で参画し、番組シナリオを執筆した。
[全文公開]番組シナリオ
1.来訪相談
岐阜県よろず支援拠点は岐阜市薮田南にある、ふれあい会館10階の公益財団法人岐阜県産業経済振興センターが実施機関として運営する、国(中小企業庁)による「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」として平成26年6月にスタートした経営相談窓口だ。コーディネーターを中心に中小企業経営者の頼れるパートナーとして、あらゆる経営課題に迅速な対応と的確なアドバイスをモットーに最適な解決策を提案している。
県下の中小企業経営者から寄せられる主な相談は、1.売り上げを伸ばしたい、2.事業連携をしたい、3.経営を見直したい、の3つに集約される。1つめの売上向上については、百貨店(名古屋三越栄店)や土産物店(櫻文化堂@セントレア)などの店舗との連携を通して販路開拓に直接結び付けることや、セミナーやワークショップを通して経営者に求められる職務能力を身につける支援を体系的に実施して具体的な成果に導いている。
2つめの事業連携については、日頃から県下の商工会議所や商工会の経営支援員や市町村の商工部職員からの相談を受けていることから、それら支援機関のネットワークを用いて異業種間の連携事業を取りまとめている。また、三輪コーディネーター自ら名古屋市に拠点を持つ小規模事業者であることから、愛知県内の中小企業経営者との密接なネットワークを持っており、岐阜県内に留まらない強みを活かした事業連携に取り組んでいる。
3つめの事業見直しについては、県下の金融機関や税理士等の認定支援機関との密接な関係により、金融機関の紹介による経営改善に取り組む中小企業経営者の相談に乗り、今後の見通しや競争力を高めるために取るべき事業戦略についての見立てを経営者とともに考える取り組みを行っている。また、これまで支援が手薄であった飛騨高山地域においても、高山市役所を取りまとめ機関として、広域にわたるサービス提供に心掛けている。
2.啓蒙啓発
岐阜県よろず支援拠点の事業展開は、相談者の窓口来訪を待つ相談業に留まらない。これからの中小企業経営はどうあるべきか、競争力や商品力をどう高めていくか、信頼度や知名度をどう高めていくか、といった内容をテーマとしたセミナーやワークショップを体系的に連続開催し、県下の中小企業経営者の経営力、マネジメント力強化のための啓蒙啓発活動にも積極的に取り組んでいる。実践的な内容は評判も高く、リピート受講者も多い。
また、連続セミナーと連動する形で、ぎふチャンの夕方のニュース番組Station!内で月一回、経済特番『Turning Point~成功への分岐点』において県下の中小企業の先進先行事例を紹介し、そこから何を学ぶべきかを生出演して解説している。さらにはこれより、岐阜新聞においても連載記事が掲載される予定である。「岐阜県を豊かに、中小企業を元気に」をキャッチフレーズとして県下の中小企業の経営強化に多面的に取り組んでいる。
3.出張相談
岐阜県よろず支援拠点の相談対応は、来訪によるものに留まらず「現地・現物・現実」の三現主義のもと、企業の現場に訪問して行うことにも積極的だ。また、市役所・町役場や商工会議所・商工会から寄せられる相談に対応し、地域の経営課題に取り組んでいることも特徴的である。これまでの公的支援機関は個別の事業者の個別の経営課題に対する支援策を、公的支援制度や支援者個人の裁量の範囲内でサービス提供してきたのである。
企業の現場を実際に見ることによって、整理整頓や在庫の多寡といった現場改善のポイントに留まらず、管理レベルから従業員の士気まで、いろいろな事象を伺い知ることができる。中小企業経営者の頼れるパートナーとなるためには目線を合わせる必要があり、訪問相談を重視している。また、地域の伝統産業や地場産業を支援していくためには、個別の事業者対応に留まらない業界支援が必要であり、自治体や支援機関との連携は欠かせない。
4.まとめ
岐阜県の企業は「作るのは上手いが売るのは下手」とよく言われる。これは産業構造上、大手メーカーの下請け企業が多く、指示された図面に忠実で低コストなモノづくりには真面目で勤勉な基本姿勢で能力を発揮するが、自ら創造性豊かに付加価値を高めて情報発信していくことには不慣れであることに起因している。この点に着目して、まずはじめによろず支援拠点が補い、身につけられるように啓蒙し、実行を支援することに取り組んでいる。
そしてまた、毎年発表される地域ブランド調査で岐阜県は2014年40位(2013年37位)と低迷しており、さらに下降傾向にある。地域創生が政府から喧伝され、数々の公的支援策や民間の取り組みが行われるなか、付加価値の高い商品やサービスを創出するためには、県民一人ひとりがこれまで慣れ親しんできた保守的で従属的な発想や産業構造基盤を転換し、力強く自律した個人そして企業へと体質を改善する必要がある。
これからのわが国の中小企業を取り巻く産業構造は、大手のセットメーカーを頂点とした「ピラミッド(三角)型」から、中小企業が横に手を組み強い連携体をつくる「シートパイル(矢板)型」へと転換していかなくてはならない。そのために岐阜県よろず支援拠点は、一つひとつの企業体の盤石な経営体質の形成、ならびに地場産業の業界支援に取り組み、伝統産業の現代人のライフスタイルにマッチした新たな価値の創出に勢力を注いでいく。
完