岐阜発 地方創生の将来へ(2)
筆者は日本生産性本部で協力経営コンサルタントとして企業経営コンサルティングに従事したのち、志あって地元にもどり6年間に渡って岐阜県において、産業振興分野で公的支援の役職に就き、地方公共団体や公的支援機関と直接の当事者としてかかわってきた。
「中立」「公平」「公正」を是とする経営コンサルタントの視点で産業振興や地方自治に関わってきたのだが、そこには、民の論理からは違和感を禁じ得ない官の論理が蔓延している。それが地方創生の阻害要因となっているのではないかと初めは疑念を抱き、今では確信に至っている。
自力創生できない行政
目立つ戦略立案の"丸投げ"
組織の特性上、地方公共団体では部署の異動が早く、課題に直面しても「どうすれば良いのか分からない」、「ノウハウがないからできない」など初歩的な段階で「知識の壁」が存在する。知識がなければ、過去を知り、現在を診断しなければならない。未来を見通すことができないのは企業経営も同じだが、企業は経済合理性を追求するがゆえに知識は体系化され、改善を積み重ねて事業は推進される。筆者の経験としては国の予算事業を展開する役職に着いたのだが、受託機関や監督官庁は具体的に何をやれば良いのか「分からない」という驚愕(がく)すべき事象に直面した。
この「知識の壁」を突破するために「地方創生カレッジ」は開設されていると評価できるが、岐阜県内で昨年度に実施した地方創生に関する調査事業では、組織として「積極的に履修している」と回答した地方公共団体は存在しなかった。そこには、「前例を変えることは忌避したい」、「新しいことは苦手である」などといった、いわば保守的で硬直的な思考特性によって直面する「意識の壁」が存在している。
現実を直視することを避けようとしてしまうなど、最も根が深く、とてもぶ厚く立ちはだかる深刻な壁が存在し、そうした態度に筆者も腐心させられた。
行政に立ちはだかる「3つの壁」
さらに、部署別に事業費が予算化される縦割りであり、基本的に決算の概念がなく成果が評価の対象とならないなどの特性に起因する「組織の壁」も存在する。地方では、安定した就職先として地方公共団体が位置する。優秀な人材が集約する一方、前述のような思考特性や基本姿勢から、課題に直面すると脆弱な一面が露呈する。表層的な議論に終始して結果にコミットせず、重要課題の方策立案を外部に依存してしまうことが多々ある。地方創生に関しても、「地方版総合戦略」を外部の民間事業者に委託して策定した自治体の割合が8割を超えた。
真の地方創生を実現していくためには、これらの「3つの壁」に集約される阻害要因を解消していくことこそが肝要である。地方創生カレッジの補助事業者として国から委託されている日本生産性本部において、筆者は地方創生カレッジ総括プロデューサーとして今期、岐阜県内3カ所において「地方創生カレッジin岐阜」と題した官民連携講座をワークショップ形式で開催した。次回はその企画意図や事業内容について詳述していくこととする。