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[連載記事]中部経済新聞19.05.16「地方創生 岐阜の現場から」(上)

2019.05.16

地方創生 岐阜の現場から(上)

地域創生に知恵を絞るNPO法人ORGAN(岐阜市湊町、オルガン)の取り組みが注目されている。同法人は、2011年に設立。まちづくり事業や観光関連商品を企画するなど、もう一段の地域の活力向上に努めている。

ORGANは、長良川流域で観光体験プログラムを提供する「長良川温泉泊覧会(長良川おんぱく)」の運営などで定評がある。

18年7月、観光地域づくりを主導する「日本版DMO」の法人として観光庁に登録。欧米で普及しているDMOは、地域の観光マネジメントやマーケティングを一体的に実行する組織。日本でも、関係省庁などが地域と連携しながら観光地域づくりを主導する日本版DMOが注目されており、19年3月末時点で全国123件が、候補法人には114件がそれぞれ登録されている。

 

NPO法人「ORGAN」   長良川おんぱく運営

 

ORGANが登録されたのは、複数の市町村区域で活動する「地域連携DMO」。長良川流域の岐阜、関、美濃、郡上の各市でさまざまな観光体験を提供する長良川おんぱくの運営や、地域資源を活用した商品開発、創業支援などを実施している。

漁見学やアユ料理のフルコース、工芸品づくりに自然体験—。長良川おんぱくのプログラムには、岐阜でしか味わえない体験が散りばめられている。「温泉泊覧会」は大分県の別府温泉が発祥。ORGANが別府のノウハウを学び、長良川おんぱくを立ち上げた経緯がある。現在まで8年にわたる取り組みで全国有数の「おんぱく」に成長。一過性のイベントで終わらせず、その後の地域活性化につながる場を提供している。

 

ORGANの蒲勇介代表は、「長良川おんぱくは事業育成の装置」と話す。プログラムは企業や団体、個人といった「パートナー」が企画運営。パートナーの多彩なイベントが、企画全体の成功につながっている。パートナーは新事業や商品を試すテストマーケティングの場として参画し、成功すれば事業化や起業の可能性も見込めるため、関係者の関心は高い。

 

観光振興に貢献   人やモノ結び収益モデル

 

このほか、「岐阜和傘」のPRにも注力している。和傘の製造体験や高い意匠性を組み合わせた高付加価値の商品を展開。桜をモチーフに発売した20万円の和傘は、納期まで数カ月待ちの人気商品となっている。

地域に点在していた人やモノ、場所を再発掘して収益モデルを再構築。後継者育成にも取り組み、持続可能な事業展開を支援していく考えだ。蒲代表は「事業者のもうける姿を見て、その姿に憧れ、次を担う人が出てくれば」と地域創生に期待を込めている。

一連の取り組みは、内閣府の「地方創生カレッジ」でも全国に紹介。岐阜県での先進事例として今後の動向が注目されている。