私のキャリアと事業のコンサルティングレビュー
(日本生産性本部茗谷倶楽部会報第76号寄稿文)
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三輪知生(経営塾2期)
2.公的支援の担い手として
名古屋大学大学院の恩師からアドバイスがあり、「日本の空洞化への対処」を具体的な仕事にできるポストとして、公的支援(産業振興分野)の担い手=コーディネーター職の公募があることを知り、公益財団法人岐阜県産業経済振興センターのものづくりコーディネーターに応募して2012年に就任しました。週二回の当番としての勤務でモノづくり企業に出張訪問して、直面する経営課題の相談や助成金申請のアドバイス等を行う仕事です。
その後、2014年度より中小企業庁の新たな予算事業である「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」として「よろず支援拠点」事業が始まり、当時の産業振興センター理事長よりチーフコーディネーター(代表職)に推薦する旨の通知を受け、応募して選任されるに至りました。それまでの公的支援制度の機能限界を突破するべく、専門性の高い人材を幅広い分野から集結させ、民間主導の意思決定で進める相談事業が特徴です。
従来の公的支援機関(商工会/商工会議所や県や市の産業振興センター等)は、中小企業庁による支援制度のサービスプロバイダーとしての役割を担い、その普及および利用促進に務めるミッションを担う存在です。一方で「よろず支援拠点」は中小企業に寄り添い、その経営課題を直視して経営者と共に課題解決に立ち向かうことを役割期待として担う、公設のコンサルティングファーム=ソリューションプロバイダーであることが社会的な使命です。
47都道府県にそれぞれ設置され、全国一律の仕組みの上意下達の導入ではなく、各地の産業構造や中小企業の実態に則した相談体制や人員配置を、代表者であるチーフコーディネーターの采配で構成し、日々寄せられる相談に対応する仕組みです。また、それまで中小企業と比較して小規模事業者を対象とした施策が手薄であったものを充実させ、外部環境の変化に脆弱な小規模事業者に救いの手を差し伸べる役割期待も寄せられた新規事業です。
全国のチーフコーディネーターの平均年齢は60歳、プロコンとして活動する若手チーフは少数派で、企業や金融機関、県庁職員のOB人材が主に登用されてスタートしました。岐阜県よろず支援拠点では、本来の公的支援機関はどうあるべきかを第一命題として、既存機関の従来サービスと重複をせず、相互補完的な役割と機能を果たすために(1)相談対応、(2)啓蒙啓発、(3)情報発信を3本の矢として事業を組み立てて推進しました。
(1)相談対応では、窓口に来てもらう来訪相談、企業の現場に伺う訪問相談、そして当本部コンサルティング部の無料経営診断を3大サービスメニューとして展開しました。(2)啓蒙啓発は、フォーラム(問題の提起)→セミナー(方策の提案)→ワークショップ(解決の着手)の3ステップで進めました。(3)情報発信としては、新聞・雑誌での記事掲載、テレビやラジオ番組での事例紹介などを通して知名度や信頼度の向上に努めました。
また、岐阜県の特徴としては、地方自治体(市役所、町役場)の商工部門と連携して相談窓口を各地に設置し、広域に渡り均一の支援サービス体制を構築してきたことが挙げられます。全ての市役所、町役場に声を掛け、積極的な取り組み姿勢を持って経営者の相談窓口を設置したいと考える自治体と手を組み、10市7町において相談対応する体制の整備を図りました。産業振興の観点から、地方創生の実践に着手してきたと自負しています。
こうした岐阜県の取り組みは、中小企業庁が平成27年度に実施した「よろず支援拠点コーディネーターの支援スキル・サービス品質UPプロジェクト調査」において、特徴的な取り組みをしており優れた成果を創出している拠点の一つとして、北海道、愛知県、広島県、福岡県、大分県とともに高い評価を受けました。県や国による産業振興の予算事業に計6年間に渡って従事し、「日本の空洞化への対処」について、やるべき事が見えました。