徹底した"お客様目線"で業績アップ!
株式会社山本呉服店(揖斐郡揖斐川町)
[全文公開]番組シナリオ
1.背 景
ここは本店を揖斐川町に持つ山本呉服店の催事会場。日頃、着物を着て出かける機会が少なくなる中、若いお客さんも数多く訪れる和服のイベントがこの店で定期的に行われている。店員の明るい応対とお客さんの笑顔が行き交う中、ひときわ明るいのが女性店主の山本由紀子社長だ。
便利な場所で気軽に立ち寄れるお店として親しまれている山本呉服店は、山本社長の明るい性格が象徴するように、創業120余年の長い歴史の中で、地域の人々に愛され頼りにされる呉服店として、大手量販店が進出してきた時代の流れに対しても、独自路線を辿り、集客力を誇る。
2004年に社長交代してからは来店型営業を中心に、会報誌に店員紹介をするなど明るい笑顔の見える営業展開を図っている。着物を着るのは振袖を必要とする10代~30代、そして親世代にあたる40代~50代が中心。そうしたお客さん達のハートを掴む工夫を凝らしている。
2.由 来
山本呉服店は1890年(明治23年)創業の老舗企業。そのルーツは江戸時代中期(1780年頃)、揖斐城の城下町として栄えていた現在の本店の地に、先祖が移り住み宿屋を始めたことにまで遡る。当時は旅人の便宜を図り、着物の綻びを直したり、新たな着物を販売していた。
明治時代に入り旅館業をやめ、呉服専門店に転業したのを創業の年としている。初代の女当主が呉服店としての礎を築き、地元の繁盛店となっていった。先代である三代目の時代には、大型量販店が攻勢を強めていた時代。テナント出店の要請もあったが、運営方針が異なると断った。
着物市場はピーク時の1981年に1兆8000億円あったものの、現在ではその6分の1となっている。生活の洋風化や女性の就業の増加などにより、日常着としての着用は稀になっており、着るのはフォーマルな場が中心となるが、全体として着物需要は着実に減少してきている。
3.本 題
消費者にとって着物の魅力は大きいが、高価さ、着用機会の少なさ、動作の不自由さ、1人で着られず手入れもできない、決まり事を知らないなどの理由から魅力度と実際の着用との背離は拡大している。そうした中、現社長の山本由紀子社長は工夫を凝らし、ファンを増やしている。
用がなくても気軽に立ち寄ってもらえる店頭集客型の販売形式に訪問販売から転換。着物を購入したお客様に会員になってもらい、会報誌を発行して、店員との身近なコミュニケーションツールとして活用している。また、購入した着物の着付けを生涯無料にするサービスも開始した。
着物を着たくても着付けが面倒というお客様の声からスタートしたこのサービスは好評で、地域になくてはならない店として支持されている。さらには、気軽に着物を着て出かける機会を作り出そうと、会員を対象として不定期に観桜会や観劇、お茶会などのイベントも開催している。
4.解 説
日本の伝統的な衣装である和服は、ライフスタイルの変化や、女性が働きに出ることが多くなったことなどによって、日常ではほとんど着られなくなっているのが現状です。着る機会がフォーマルな場面に限られるなか、最も売れた頃と比べて市場規模は1/6と大幅に減少しています。魅力はあっても、縁遠い存在となってしまっているのです。
ご覧戴いた山本社長は、明るく楽しい店舗の運営、着付けの無料サービスや会報誌の発行、おでかけイベントの開催など、和服を身近な存在にする努力を積み重ねています。持ち前の明るさとやりきる力で環境の変化に立ち向かい、お客様と身近できめ細かなコミュニケーションを継続してきたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。
完