"地元の強み"を活かしてヒット商品を開発!
有限会社夢幸望(美濃加茂市)
[全文公開]番組シナリオ
1.背 景
ここは下呂温泉にある老舗の温泉旅館・木曽屋。ここに最近、足腰が弱くなってお布団での寝起きが次第に辛くなってきたという、シニア層のお客様の声から、木製のベットが導入された。天然ヒノキの香りに包まれて寝心地もよいと宿泊客から好評で、旅館の和室にピッタリと合い、折りたたみも簡単にできるので収納も楽々と、女将も絶賛している。
このベッドは、長年に渡って寝具店を営んできた早川社長が、お客様から数多く寄せられた寝具や眠りに関する相談をもとに、シニア層にとって理想的な睡眠環境、そしてベッドはどのようなものが良いのかについて考案したことから誕生した。作り手を探していたところ、加工設備を持つ加子母森林組合が早川社長の想いやアイデアに賛同して実現した。
はじめに出来上がった自社商品第1号のベットは、早川社長の熱い想いもあって豪華で高価なものとなった。この販売を進めていくうちに、もう少し廉価版のものはないか、という来店客からの要望が多く寄せられたことから検討し直し、木曽屋にも導入されたものが、この「かおりちゃん」だ。現在、全国の寝具店や百貨店での取り扱いが始まっている。
2.由 来
現在、このベッドの量産を担っているのは、七宗町にある株式会社フクモクだ。これまでシステムキッチンの戸棚などの量産で培ってきた木工加工技術の評価は高いものの、受注先の工場が海外に移転するなどもあって仕事が減ってきたこともあり、福井社長は早川社長の要請を自社の新しい事業展開のチャンスととらえて「かおりちゃん」製作を引き受けた。
早川社長としても、これまでは大手寝具用品メーカーの特約店として、ヒト(他人)のものを売ることに専念してきたという経緯から、地元岐阜県の誇りある商品を自ら作って売り出して行きたいとの思いが強く、また、福井社長の誠実な人柄と真剣に取り組む姿勢に共感して、今回の量産をお願いするに至り合意のもとに対等な関係で製作がスタートした。
このベッドの一番の特徴は、天然ヒノキの香りに包まれて心地よく眠りにつけることにある。そして、若年層からシニア世代まで、構造もシンプルかつ堅牢なので長年の使用にも耐える信頼性があり、片付け・移動も簡単にできるので、誰にとっても使い勝手がよいこと。眠りの環境を知り尽くした寝具店店主ならではのアイデアが満載なのが支持される理由だ。
3.本 題
寝具店である夢幸望ハヤカワは、先代社長の父親が加茂郡八百津町で綿打のふとん店として1953年に創業。1985年に現在の美濃加茂市に店舗を構えて30年となる。寝具とギフトの販売で全盛期に2億円あった売上は、日本人のライフスタイルの変化や、テレビ通販、ネットショップなど流通形態の変化から、1/3程度にまで落ち込んでいる。
2代目となって22年となる早川社長は、このままの業態では経営が立ち行かなくなるとの危機感の下、自分にできることは何か、地元の強みをどう仕事に活かしていくかと思案し、 自社のオリジナル商品を持ちたいとの思いを重ね、これまでの経験で培ってきた眠りに関する知識やお客様の声から、オリジナル商品となるヒノキのベッドの製作に取り掛かった。
岐阜県は森林率が81%と全国2位で森林資源が豊富にあり、その中でも東濃ヒノキは伊勢神宮の建材としても重宝されている。そしてヒノキは抗菌作用やリラックス効果があるとされ、寝具にはピッタリの素材。早川社長は誇りと自信を持って、このヒノキのベッドを全国規模での販売展開を図っていくべく、展示会への出展や百貨店、寝具店への積極的な営業に日々励んでいる。
4.解 説
寝具は人生の1/3を過ごす生活必需品として、すべての家庭で利用されています。その一方、以前はどの街にもあったお布団屋さんは、最盛期の4割にまで店舗数も売上も縮小しているのが現状です。ライフスタイルの変化、ショッピングモールや大型量販店の出店、テレビ通販で大々的な宣伝を伴った新商品が登場してきたことなどが影響しているのです。
ご覧戴いた早川社長は苦境に立たされる中、お客様の声と地元の強みを活かすことに活路を見出し、広く支持されるオリジナル商品の開発に成功しました。環境の変化に適応しつつ、永年培って来た知識と経験のもと、突き抜ける発想で事業に取り組んできたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。
完