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[シナリオ]Turning Point モノづくり編104 "突き抜ける発想"で伝統を超えていけ!

2018.07.20

"突き抜ける発想"で伝統を超えていけ!

 

家田紙工株式会社(岐阜市)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

「本美濃紙」がユネスコ無形文化遺産に登録(2014年11月)されて注目される美濃市には、服飾に展開する[みの紙舞(市原慶子代表)]や照明機器に展開する[美濃あかり館彩-いろどり-(中村 ちゑみ代表取締役社長)]など、美濃和紙を使いた商品を取り扱う店舗が美濃市旧市街には点在する。

そうした中で、ヨーロッパを中心に熱い支持を受けて海外展開している店舗がある。その名をカミノシゴトといい、美濃手漉き和紙の専門店として日本の伝統的な「水うちわ」や本美濃紙の折り紙、そして欧州で人気のウインドーデコレーション(窓装飾)用の「スノーフレーク」などが人気の商品となっている。

この「スノーフレーク」は水だけでガラス窓に貼れるデコレーションで、霧を吹き付けるだけで簡単に窓に貼り付けることができ、光があたると乱反射して光り輝いて見えるのが人気の秘密であり、日本古来の伝統文化が、ヨーロッパの文化・風習・生活習慣を支えているという異文化交流も話題となっている。

2.由 来

カミノシゴトを運営するのは、岐阜市に本社のある家田紙工株式会社。明治22年創業の老舗企業で、伝統産業である岐阜提灯に貼る和紙に絵付けや名入れをして販売する事業をルーツとしている。日本人のライフスタイルの変化に伴って提灯の需要は減る一方で、新事業への展開に踏み出したのは家田学代表取締役社長。

2002年に岐阜県紙業組合連合会がギフトショーに出展する際に、インテリアに合う提灯を出展したのが新事業展開のきっかけだった。商品開発や接客のノウハウも何も無いなかで、とりあえず自社でできることとして、現代人にマッチした提灯を提案商品として出展したものの、なかなか販売にはむすびつかなかった。

その後、岐阜県の観光交流局長を務めた古田菜穂子氏と出身高校が一緒だったという縁がきっかけで古田氏をディレクターに迎えることに。そして、岐阜提灯の製作で培ってきた和紙加工技術を活かした商品づくりを進めることとなり「1/100」ブランドを立ち上げて、本格的に提灯以外の分野に展開していくことに。

3.本 題

2005年に、ドイツで開催される消費財見本市である「アンビエンテ」への出展を決め、提灯の派生商品的な発想で照明機器を展示した。しかし、ヨーロッパに電気用品を輸出するには欧州独自のCE規格を取得する必要がありイニシャルコストが掛かることや、現地で売られている競合品に価格で勝てないことから壁に突き当たった。

次に考えたのが、照明機器自体ではなくカバー(ランプシェード)。岐阜県の助成金を活用して商品開発し、アメリカで開催されるNYギフトショーに出展。一定の成果を得ることができ3年連続して出展しすることとなった。しかしながら、海外展示会への出展にはコストが掛かることもあり、次第に売上が頭打ちとなってきていた。

手工芸品的な商品の人気はフランスで開催されるインテリア・デザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」の方が良いとのアドバイスがあり、また、欧州の風習としてウインドーデコレーションの市場を知り、繰り返し利用できるエコ商品という付加価値もつけてスノーフレークを商品化し、2010年に見本市に出展してヒットにつなげた。

4.解 説

ライフスタイルの変化や、安い輸入品に押され、伝統産業の火は消えそうになっています。また、売れる商品として世の中に提供していかなくては、事業として存続することができません。一方で、日本の食文化や和紙、そして歌舞伎などの伝統文化は、国内よりも海外で高く評価されブームとなり、その価値が認められているのが現状です。

ご覧戴いた家田社長は逆境に直面する中で、ヨーロッパの展示会に活路を見出そうと試行錯誤を重ね、ヒット商品を生み出すことに成功しました。環境の変化に立ち向かい、強みを活かせる海外に目を向けて、突き抜ける発想で商品開発したことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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