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[シナリオ]Turning Point 飲食編101 柔軟な発想で大ヒット!の老舗お酢メーカー

2018.07.29

 柔軟な発想で大ヒット!の老舗お酢メーカー

 

オークスハート株式会社(八百津町)

[全文公開]番組シナリオ

1.背 景

八百津町は木曽川中流域に位置し、丸山ダムができる以前は木材の集積する交易の港として隆盛を極め、一説には八百(=多い)津(=港)が地名の由来であるとされている。そうした環境下、古くから林業が行われたほか第二次産業が盛んとなった。

豊かな水資源と多くの人々の往来によって産業が栄え、土産物として(発祥の地とも云われる)秋の味覚・栗きんとんが人気となり、醸造文化が育まれて味噌・醤油そして酢が造られた。戦後には大ダム建設の先駆けとして、丸山ダムが建設された地である。

日本のシンドラーと呼ばれ第二次大戦中にリトアニアで大量の難民にビザを発給した杉原千畝、テレビドラマで有名となった池井戸潤の出身地である。人口は1970年に約16000人あったが2010年には12000人と減少傾向にあり、地域再生の象徴的な街でもある。

2.由 来

内堀醸造は1876年(明治9年)に創業し、酢を製造している。主にスーパーマーケットに向けた商品ラインナップを製造しており、綺麗で美味しい水と空気によって育まれる当社の酢は、中部地域を中心として根強い人気商品となっている。

素材にこだわり、工程にこだわり、品質にこだわり、原材料から一貫した丁寧な生産体制をとり、できるだけ原料に近い工程で独自の加工(精米、麹、蒸留、だしなど)を行うことで、他にない独自な高品質の商品を世に送り出している。

いまや海外でも生産している大手有名メーカーが隣県にあるなかで、生産量ならびにシェア争いで勝負することなく、豊かな天然資源とこだわり素材との対話から生まれる高品質な商品に社運を託し、一品一品丁寧な酢づくりを続けている。

3.本 題

そうした酢造りの理念からオークスハートは生まれた。競争が激化し安価な商品がもてはやされるなか、デパ地下販売という高いハードルを幾多の苦難を乗り越えて実現した。品質へのこだわりと多様化する顧客の嗜好に適応することで、デザートビネガーという独自商品を展開するに至った。

デパ地下で華々しく展開する現在の姿からは想像しにくいが、開発の過程では、従来商品のままでは売れないという消費者の壁、売り場の壁があっただけでなく、歴史と伝統を重んじる本社からも未知の新しい業態展開に対して反対されるなど、苦労の連続があった。

内堀社長(本社社長の弟)は商社勤務の経験もあり、広い知見と柔軟な発想、そして決して諦めない弛まぬ努力によって、人々から選ばれ愛される商品、デザートとして酢を飲むという新価値提案を「酢ムリエ」という独自のスタイルで展開している。

4.解 説

料理に使うお酢の分野には、大手のガリバー企業が存在します。またスーパーマーケットでは、値引き合戦や売り場の確保といった激しい競争がメーカーを待ち受けています。中小企業は、大企業と戦っては勝てません。「商品をより安く」ということは、お客様には良いことであっても、作り手にとっては厳しい条件となります。

ご覧戴いた内堀社長は、百貨店で自社商品を売るチャンスを得て、オリジナル・ブランドを生み出し、お酢をより付加価値の高い商品に育て上げました。環境の変化に適応し、柔軟な発想と独自のこだわり、そしてトコトンやり遂げる信念と情熱を持ち続けたことが、成功への分岐点になったと云えるでしょう。

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